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市ちゃんの徒然なるままに
『森の記憶』(柴垣文子著 新日本出版社刊)  2021年8月12日

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「誰かが泣いている」。
とても印象的なフレーズでこの長編小説は始まる。
舞台は京都府南部の自然豊かな「穂水町」。この町名は架空のもの。情景から著者の住む京都で唯一の村「南山城村」だということは京都で40年近く過ごした私にはすぐわかる。
その街に暮らす、病弱のため早くに小学校教員の職を辞した「いずみ」と、中学校教師を定年退職した夫の「晃」夫婦とその子や孫たちの、自然を愛し、自然に生きる姿を生々と描く。まるで自分がその森や林の中に、「穂水川」のほとりに佇んでいるような気持ちにさせる。
見事な情景描写だ。
一気に小説世界に惹き込まれる。
晃はステージ4の進行性大腸癌に侵される。その患者と家族との息詰まるまるような「間」と「空気」は体験したものでないとわからないリアルさで読者に迫ってくる。
 「限られた命と向き合いながら、“自由に生きる”ことを問いかけ生きた夫婦のものがたり。」(本の帯)は圧巻だ。
 「死ぬとは、いかに残された人生を前向きに生きるか」ということと同義語だと分かってはいても、同じように20年前に大腸癌の開腹手術をし、最近は脳梗塞の大手術をした私には到底「晃」のような心境にはなれない。
 再発を恐れ常に死への恐怖に慄いている小心者だ。なかなか達観できない。
だがこの小説を読み、一歩でも二歩でも「晃」の境地に近づきたいと思った。
 「自由に生きたい」と願う「晃」は、「しんぶん赤旗」を長い間読み続けてきたが入党を勧められても断ってきた。
 しかし、「憲法を知る会」や里山の自然を守る運動と、手渡された日本共産党綱領と規約を読み直し、「共産党は人間の自由のためにあることを知」り、「死の間際じゃなくて、少しでも早く入りたいなあ」と決意する。
 この小説には鹿や猪、リス、ウグイス、カワセミ、オオタカ、鮎、カスミサンショウウオ、金木犀、テオカズラ、冬青、タンポポ、楓、山桜、ウワズミ桜、等々、実に多くの獣、魚、鳥、花、木が出てくる。
 鳴き声もよく登場する。
 「誰かが泣いている。なんとせつなげな声だろう。」
 それは、鹿や小鳥の泣く声でも、「きしむ木の音や電線の鳴る音」でもなく、私には夫を失った「いずみ」、父や母を写真でしか見たことのない「いずみ」の悲しみ、いや著者柴垣文子の偲び泣きのように思えてならない。著者は実生活でこの小説の連載直前に夫と死別している。
 作品とは無関係だが、私が琉大図書館で司書の仕事をしながら、共産党伏見地区委員会の非専従の青年学生部長をしていた頃の京都教育大学(所在地が伏見区)の学生が柴垣夫妻であったことも、この小説に特別の感情を覚える要因の一つである。
 柴垣さんの娘さんは私の職場の同僚でもある。
 この作品はセンテンスが短い。独特のリズム感がある。
 文芸評論家の宮本阿伎は、「一度読み終えてもまたどこかの頁を繰ればいつの間にか読みふける自分を読者は見いだすのではないか。里山の自然につつまれた人々の営みと思索と様々な仕掛けがほどこされ構成されている小説の世界であればこその面白さ、味わい深さがある。読む者に自身の生き方を思わず振返らせる刻々が映し出されている」「何よりもやはり感動は、作者が書かずにはいられなかったモチーフの強さからくるものであることを疑うことはできない。」(『民主文学』2021年4月号)と述べているが全く同感である。

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